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福島家庭裁判所 昭和55年(家)205号 審判

申立人 原加代 外一名

相手方 原節子 外一名

主文

一  被相続人原辰男の遺産をつぎのとおり分割する。

1  申立人原加代はつぎの不動産を取得する。

ア  福島市○町×-× 宅地面積一四五・六七平方メートル

イ  同上所在居住家屋番号×-× 木造瓦葺平家建

床面積四一・三二平方メートル

2  申立人原光男はつぎの物件を取得する。

ア  福島市○○○字○○○×-×× 原野面積一、二七〇・〇〇平方メートル

イ  期末勤勉手当(昭和五三年度一二月分支給分) 四三四、〇六〇円

ウ  死亡後被相続人名義で支給された給与 一五一、九四八円

エ  ○○銀行(○○支店)普通預金 五六八、五〇五円

オ  ・普通乗用車(トヨタコロナ 四九年型 一六〇〇CC)一台

3  申立人原加代は同原光男に対し五五〇、九九五円を支払え。

二  相手方原節子、同原誠は本件遺産からなにも取得しない。

三  鑑定費用八〇、〇〇〇円はこれを四分し、各当事者はその一づつを負担する。

理由

(一)  相続人

被相続人原辰男は昭和五三年一一月一一日死亡し、その相続人は同人とその先妻亡トキ子との間の長男申立人原光男、長女同原加代、および被相続人の妻であつた相手方原節子、同女との間の長男相手方原誠(以後当事者の姓を省略することがある)の四名である。

(二)  特別受益

1  別表二のうち一の死亡退職金および三~五の各保険金は被相続人の死亡によつて発生した財産権であるので、被相続人の遺産を構成するものではなく、その取得者によつて原始取得されたものといえる。しかし、右各財産権の発生には被相続人の生存中その財産からのなんらかの出損(被相続人の給料等からの退職金の積立て、保険掛金の支払)があるので右財産権の取得はその取得者における被相続人からの特別受益とみることができる。

2  同表中二の定期積立貯金は被相続人が相手方節子名義で積立てたものであるので、贈与として特別受益とみられる。

3  そしてこれらの財産権はその取得名義者は一応相手方節子であるが、その趣旨は被相続人がその妻節子とその間の子相手方誠とのいわば遺族の生活保障のためになしたものであるとみられるので、節子名義であるということは誠の受益を排除する趣旨ではなく、逆にこれを含めるものであると認められ、したがつて上記受益は相手方両者による共同での特別受益と認められる。

(三)  したがつて被相続人の遺産は別表一の財産のみであり、その価額(被相続人の死亡時および現在時)はいずれも同表記載のとおりである。

(四)  遺産の分割

一  先ず特別受益をえた相手方節子、同誠がなお本件遺産につき相続分をもつか否かにつき検討する。

ア  被相続人死亡時の遺産の評価額は(一)不動産は計一四、六七六、六一九円(二)その他の財産は計一、三五一、九三八円である。そこで相手方両名の特別受益額計二二、三六二、二五九円を被相続人の死亡時の遺産額に加えると

(14,676,619円+1,351,938円)+22,362,259円 = 38,390,816円

となる。

イ  相手方節子の法定相続分は三分の一、同誠のそれは九分の二であるから

38,390,816円×(1/3+2/9) = 21,328,231円

ウ  したがつて相手方両名はすでに自己の法定相続分を越える特別受益をえていることになるので本件遺産についての相続分はないことになる。

二  そこで本件遺産を申立人両名間で配分するに

ア  遺産の現在価額での総額は、

19,112,062円+1,246,071円 = 20,358,133円

となりこれを申立人両名で平等配分すると

20,358,133円×1/2 = 10,179,067円(円以下四捨五入)

となる。

イ  そこで諸般の状況より見て、申立人加代は表一遺産目録中の(一)不動産一・二の福島市○町×-×の土地、建物を、申立人光男はその他の遺産、すなわち(一)不動産三の同市○○○字○○○×-××の原野、と同表(二)のその他の財産をいずれも取得するのが相当であると認める。

ウ  そうすると申立人加代の取得財産の価額は

10,342,570円+387,492円 = 10,730,062円

となつて自己の相続取得分一〇、一七九、〇六七を五五〇、九九五円越え、他方申立人光男の取得財産の価額は

8,382,000円+1,246,071円 = 9,628,071円

となつて上記自己の相続取得分一〇、一七九、〇六七円より五五〇、九九六円(一円は端数)不足することになる。

エ  したがつて申立人加代は同光男にこの不足分五五〇・九九五円を支払うこととして、同両者間を調整することにする。

三  なお鑑定人○○○○に支払つた鑑定費用八〇、〇〇〇円はこれを当事者四名が平等分割負担することにする。

(家事審判官 福島重雄)

遺産目録〈省略〉

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